オリジナルバッジの歴史と制作方法
バッジの原型となる金属の装身具は、紀元前5千年ごろのシュメール人が最初に制作したと言われています。彫金の技術は時代とともに進歩し、全世界へと拡散していきました。日本でも7世紀頃には金属工芸が始まり、刀剣や鎧・兜をはじめ、刀の鍔や髪飾りを作る高度な技法が受け継がれていきます。明治維新を迎えると、かざり職人たちが昔の装身具に代えて、勲章・徽章やボタンなどを制作するようになりました。
こうしたルーツの影響もあって、現在でもバッジの製造メーカーは中小企業が多いことが特徴です。第二次大戦中は軍需が増える一方で、民間の金属の流通は制限され、この業界も苦労を強いられます。戦後は高度成長とスポーツブームに伴って、急激に成長する業者もありました。しかし近年では、労働力の安い海外で生産された輸入品が増え、廃業するメーカーも出ています。これに対応する意味もあって、国内メーカーの多くは小ロットのオリジナル製品を生産しています。
バッジの中でも比較的大きく、中空になっているものを缶バッジと呼びます。これは19世紀前半のアメリカ大統領選に起源があると言われています。カラフルでよく目立つこと、安全ピンで簡単に付けられること等から、キャンペーンやノベルティには最適なアイテムのひとつであり、多数のコレクターが存在します。現在では成形が自由で、多彩な色を印刷する技術も開発されており、オリジナル商品が販促グッズとして人気を集めています。
バッジの制作は、まず詳細なデザインから始まります。色や形はもちろん、尖った部分の危険性や耐久性についても検討を行ないます。次に鋼鉄に彫刻を施し、型を作ります。型ができたらプレス機で刻印し、型抜きをします。裏にピンやネジなどを溶接し、表面に着色したり磨いたりしてから、仕上げ工程に入ります。仕上げにはメッキ・七宝・樹脂など、さまざまな方法があります。最後に付属品を付け、箱に収めて完成です。オリジナル品の注文から納品までは、1か月ほどかかるのが普通です。
こうして見ると、バッジは小さいながらも、職人の技が込められた製品であることが分かります。だからこそ資格や地位の象徴として、誰からも尊重されるアイテムとなっているのでしょう。とはいえ特別に高額なものではなく、メーカー直販でオリジナル製品を安価に入手することが可能です。また単価は高くなりますが、1個からでも制作を受けつけているメーカーもあります。